世界をまあるく包む風

ほのかな日射しがある木陰のベンチを選んで腰掛けた
生まれ育った町の見慣れた公園も、今の私には少し別世界のように感じる
まるで日常世界から切り離されてしまったような時間が、誰の人生にも一度か、または何度かはあるのだろうか?
ぼんやりそんなことを考えていたら、風が話しかけてきた
といってもこちらがそう思っただけのこと
風は木々の葉をさわさわと揺らしながら私の周りを吹いている
でも、いつものように吹き抜けてしまわずに、ゆったりと循環しているよう
安らかな暖かい空気で、世界をやわらかに、まあるく包んでくれている
風がこんなふうに吹くのはめずらしい