バッハと刺繍

久しぶりの刺繍。
自分の作品なのに、神様が糸と針を動かしているみたいに美しい模様が浮かび上がる。
短い線の連続模様。たったそれだけで、作品に音楽が宿る。

今の自分が出来ること。手の中にあるもので、自分が出来ること。
手を痛めて以来、模様で埋め尽くすような刺繍は出来なくなってしまったけれど、宇宙に絵を描くみたいに、大きな空間と静かに踊るように作れたら、それで充分だと思った。
色で埋め尽くさなくても。

刺繍をしすぎると、エネルギーが指先に溜まってしまう。
この数年、それをどう解消したものかとずっと思案し続けてきた。
今日不意に、昔ピアノを弾いていたことを思い出した。
バッハの練習曲を久しぶりに弾いてみたけれど、左手が思うように動かない。それでも数十分ゆっくり練習していたら、少しずつ指が思い出してくれた。
刺繍する手の動きと、ピアノで使う指の動きは、全く違う動きなので、腱鞘炎は特に感じず、指先のエネルギーも少し外へと放出されたように思えた。

エネルギーが循環してくれると、色んな物事が動いてくれる。
指先に溜まったエネルギーは音を奏でることで、宇宙に循環され、私にはピアノという趣味が戻ってきた。
無駄なことなど一つもないのだ(笑)