やさしい内ポケット

その内ポケットは、持て余した気持をそっと入れる場所。
誰かの一言が気になって困ったり、自分でやってしまった事がやるせなくなったり、他人にはどうでも良いような事でも、本人にとっては心がざわめいて仕方がないことがあります。そんなとき、どこかにそれを入れて、良い悪いとジャッジせずに、そっと漂わせてみる事が必要になります。心の中に空間があればいいのですが、その場所が作れないことが時にはあるものです。私は仕方なく、自分の鞄の内ポケットにそれを入れる事にしました。すると、薄っぺらなはずの内ポケットは、私の持て余していたものをストンと宇宙に放ってしまいました。おそらく溜め込むことが好きではない内ポケットだったのでしょう。やり場のなかった気持が、大らかな宇宙に漂い、居場所を見つけたようでした。そのおかげで私の心は少し軽くなり、さらに空間まで出来たようでした。