少しだけ特別な道

自宅から駅までの道。同じ道を何度も通る中で、その場所だけ少し特別な道というのがあります。
ただ単に、自分が好きな雰囲気の庭や家が並んでいる道ということなのですが、その一区画は少し他と雰囲気が違うのです。生活すること自体を楽しめる人が住んでいる家ということが、一目でわかる場所だからです。もしかしたら、悠々自適な引退後の生活なのかもしれません。それでも、長くそこに住んで暮らしを楽しめるというのは、心から満ち足りて生きる上で重要なことだと感じています。ありふれた住宅街の小さな一区画。その道にある営み。

普段から観察することが好きだからか、散歩をしていてもそういうお気に入りの場所をすぐに見つけます。他とは何か違う心地よいものを感じられる場所。大抵の人は忙しくて、いちいち道にあるものや、その土地の気配に目を向けたりしないのでしょうけど、些細なことにまで目を配ることは、私の生き方の大切な事の一つとなっていました。どんなに些細なものの中にでも、キラリとした大切なものが隠されている。そんな風に世界を見てしまうからかもしれません。(のんびり歩いているようで、その実は沢山のことを脳で情報処理していたのかもしれません。)ここ最近は、周りの風景から何かを得ようとすることを少し休んで、土地の空気を大らかに吸い込みながらただただ歩いています。

一度特別だと感じたものは、何年も長く大事に思えるものですものね。道は「満ち」でもある。大事にし続けられることで、心があたたかく満ちていくように思います。