記憶にのこる風景

この風景をいつか思い出すのだろうと思う。
小さい頃からの、楽しいこともそうでないことも、記憶を大きく包みこむようなあたたかな風景。
私には田舎と呼べるような場所がないのだけれど、育った地域から歩いて40分くらいのところに、夢みたいに素敵な風景がある。
秋の終わり、この時期だけの花畑が今も大切に保存されている。
愛おしい風景。

花畑は少女のころの憧れだった。
頭のなかで、そこに咲く花を両手いっぱいに抱えてみる。
小さな可愛いらしい花が一斉に咲く事で、
世界にその存在を大きく知らせているみたいにも思える。
だからか、優しく穏やかなのに、圧倒されてしまう。
冷たい風が吹き抜けたら、この風景も次第に消えて、
枯れた花々は、次の季節に備えるための大地の養分になる。
ダイナミックな自然のサイクル。
そして私を含めた全ての人が、その一部として生きている。